The restaurant with many orders

Date: 2025-06-03

I read this short story in Japanese a few months ago, and even though I liked it, I thought it was a bit hard to understand due to the old-fashioned language. I've been using AI recently to help me better understand Japanese texts, and I thought it would be a good idea to try it with this story. Here's an AI-assisted modernised version of the text, which I think is much easier to read and understand.

注文の多い料理店 - 宮沢賢治

二人の若い紳士が、すっかりイギリスの兵隊のかたちをして、ピカピカの銃をかついで、白くまみたいな犬を2匹つれて、だいぶ山奥の、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことを言いながら、歩いておりました。
「ぜんたい、ここらの山は怪しからんね。鳥も獣も一匹も居やがらん。なんでも構わないから、早くタンタアーンと、やって見たいもんだなあ。」
「鹿の黄色な横っ腹なんぞに、二三発お見舞いしたら、ずいぶん痛快だろうねえ。くるくるまわって、それからどたっと倒れるだろうねえ。」
 それはだいぶの山奥でした。案内してきた専門の銃撃ちも、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。
 それに、あんまり山が物凄いので、その白くまみたいな犬が、2匹いっしょにめまいを起こして、しばらく吠えて、それから泡を吐いて死んでしまいました。
「じつにぼくは、二千四百円の損害だ」と一人の紳士が、その犬のまぶたを、ちょっと返してみて言いました。
「ぼくは二千八百円の損害だ。」と、もうひとりが、悔しそうに、頭をまげて言いました。
 はじめの紳士は、少し顔色を悪くして、じっと、もうひとりの紳士の、顔つきを見ながら言いました。
「ぼくはもう戻ろうと思う。」
「さあ、ぼくもちょうど寒くなったし腹は空いてきたし戻ろうと思う。」
「そいじゃ、これで切りあげよう。なあに戻りに、昨日の宿屋で、山鳥を拾円も買って帰ればいい。」
「うさぎもいたねえ。そうすれば結局おんなじこった。では帰ろうじゃないか」
 ところがどうも困ったことは、どっちへ行けば戻れるのか、いっこうに見当がつかなくなっていました。
 風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。
「どうも腹が空いた。さっきから横っ腹が痛くてたまらないんだ。」
「ぼくもそうだ。もうあんまり歩きたくないな。」
「歩きたくないよ。ああ困ったなあ、何か食べたいなあ。」
「食べたいもんだなあ」
 二人の紳士は、ざわざわ鳴るすすきの中で、こんなことを言いました。
 その時ふとうしろを見ますと、立派な一軒の西洋造りの家がありました。
 そして玄関には
    RESTAURANT
    西洋料理店
    WILDCAT HOUSE
    山猫軒
    という札が出ていました。
「君、ちょうどいい。ここはこれでなかなか開けてるんだ。入ろうじゃないか」
「おや、こんなとこにおかしいね。しかしとにかく何か食事ができるんだろう」
「もちろんできるさ。看板にそう書いてあるじゃないか」
「入ろうじゃないか。ぼくはもう何か食べたくて倒れそうなんだ。」
 二人は玄関に立ちました。玄関は白い瀬戸の煉瓦で組んで、実に立派なもんです。
 そして硝子の開き戸が立って、そこに金文字でこう書いてありました。

「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」
 二人はそこで、ひどく喜んで言いました。
「こいつはどうだ、やっぱり世の中はうまくできてるねえ、今日一日苦労したけれど、今度はこんないいこともある。この家は料理店だけれどもただでご馳走するんだぜ。」
「どうもそうらしい。決してご遠慮はありませんというのはその意味だ。」
 二人は戸を押して、中へ入りました。そこはすぐ廊下になっていました。その硝子戸の裏側には、金文字でこうなっていました。

「特に太ったお方や若いお方は、大歓迎いたします」
 二人は大歓迎というので、もう大喜びです。
「君、ぼくらは大歓迎にあたっているのだ。」
「ぼくらは両方兼ねてるから」
 ずんずん廊下を進んで行きますと、今度は水色のペンキ塗りの扉がありました。
「どうも変な家だ。どうしてこんなにたくさん戸があるのだろう。」
「これはロシア式だ。寒いとこや山の中はみんなこうさ。」
 そして二人はその扉を開けようとしますと、上に黄色な字でこう書いてありました。

「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」
「なかなかはやってるんだ。こんな山の中で。」
「それあそうだ。見たまえ、東京の大きな料理屋だって大通りには少ないだろう」
 二人は言いながら、その扉を開けました。するとその裏側に、

「注文はずいぶん多いでしょうがどうか一々こらえて下さい。」
「これはぜんたいどういうんだ。」一人の紳士は顔をしかめました。
「うん、これはきっと注文があまり多くて支度が手間取るけれどもごめん下さいとこういうことだ。」
「そうだろう。早くどこか部屋の中に入りたいもんだな。」
「そしてテーブルに座りたいもんだな。」
 ところがどうもうるさいことは、また扉が一つありました。そしてそのわきに鏡がかかって、その下には長い柄のついたブラシが置いてあったのです。
 扉には赤い字で、

「お客様方、ここで髪をきちんとして、それからはきもの
 の泥を落してください。」
と書いてありました。
「これはどうももっともだ。僕もさっき玄関で、山の中だと思って見くびったんだよ」
「作法の厳しい家だ。きっとよほど偉い人たちが、たびたび来るんだ。」
 そこで二人は、きれいに髪を整えて、靴の泥を落としました。
 そしたら、どうです。ブラシを板の上に置くや否や、そいつがぼうっとかすんで無くなって、風がどうっと部屋の中に入ってきました。
 二人はびっくりして、互いに寄り添って、扉をガタンと開けて、次の部屋へ入って行きました。早く何か暖かいものでも食べて、元気をつけておかないと、もう途方もないことになってしまうと、二人とも思ったのでした。
 扉の内側に、また変なことが書いてありました。

「銃と弾丸をここへ置いてください。」
 見るとすぐ横に黒い台がありました。
「なるほど、銃を持ってものを食うという法はない。」
「いや、よほど偉い人が始終来ているんだ。」
 二人は銃をはずし、ベルトを解いて、それを台の上に置きました。
 また黒い扉がありました。
「どうか帽子とコートと靴をおとり下さい。」
「どうだ、とるか。」
「仕方ない、とろう。たしかによっぽど偉い人なんだ。奥に来ているのは」
 二人は帽子とオーバーコートを釘にかけ、靴をぬいでぺたぺた歩いて扉の中に入りました。
 扉の裏側には、
「ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡、財布、その他金物類、
 特に尖ったものは、みんなここに置いてください」
と書いてありました。扉のすぐ横には黒塗りの立派な金庫も、ちゃんと口を開けて置いてありました。鍵まで添えてあったのです。
「ははあ、何かの料理に電気を使うと見えるね。金気のものは危ない。特に尖ったものは危ないとこう言うんだろう。」
「そうだろう。して見ると勘定は帰りにここで払うのだろうか。」
「どうもそうらしい。」
「そうだ。きっと。」
 二人は眼鏡をはずしたり、カフスボタンをとったり、みんな金庫の中に入れて、パチンと錠をかけました。
 少し行きますとまた扉があって、その前に硝子の壺が一つありました。扉にはこう書いてありました。
「壺の中のクリームを顔や手足にすっかり塗ってください。」
 見ると確かに壺の中のものは牛乳のクリームでした。
「クリームを塗れというのはどういうんだ。」
「これはね、外が非常に寒いだろう。部屋の中があんまり暖かいとひびが切れるから、その予防なんだ。どうも奥には、よほど偉い人がきている。こんなとこで、案外ぼくらは、貴族と近づきになるかも知れないよ。」
 二人は壺のクリームを、顔に塗って手に塗ってそれから靴下をぬいで足に塗りました。それでもまだ残っていましたから、それは二人ともめいめいこっそり顔へ塗るふりをしながら食べました。
 それから大急ぎで扉を開けますと、その裏側には、
「クリームをよく塗りましたか、耳にもよく塗りましたか、」
と書いてあって、小さなクリームの壺がここにも置いてありました。
「そうそう、ぼくは耳には塗らなかった。危なく耳にひびを切らすとこだった。ここの主人はじつに用意周到だね。」
「ああ、細かいとこまでよく気がつくよ。ところでぼくは早く何か食べたいんだが、どうもこうどこまでも廊下じゃ仕方ないね。」
 するとすぐその前に次の戸がありました。
「料理はもうすぐできます。
 十五分とお待たせはいたしません。
 すぐ食べられます。
 早くあなたの頭に瓶の中の香水をよく振りかけてください。」
 そして戸の前には金ピカの香水の瓶が置いてありました。
 二人はその香水を、頭へパチャパチャ振りかけました。
 ところがその香水は、どうも酢のような匂いがするのでした。
「この香水は変に酢くさい。どうしたんだろう。」
「間違えたんだ。下女が風邪でも引いて間違えて入れたんだ。」
 二人は扉を開けて中に入りました。
 扉の裏側には、大きな字でこう書いてありました。
「いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。
 もうこれだけです。どうか体中に、壺の中の塩をたくさん
 よくもみ込んでください。」
 なるほど立派な青い瀬戸の塩壺は置いてありましたが、今度という今度は二人ともぎょっとしてお互いにクリームをたくさん塗った顔を見合せました。
「どうもおかしいぜ。」
「ぼくもおかしいと思う。」
「たくさんの注文というのは、向こうがこっちへ注文してるんだよ。」
「だからさ、西洋料理店というのは、ぼくの考えるところでは、西洋料理を、来た人に食べさせるのではなくて、来た人を西洋料理にして、食べてやる家とこういうことなんだ。これは、その、つ、つ、つ、つまり、ぼ、ぼ、ぼくらが……。」ガタガタ、震えだしてもうものが言えませんでした。
「その、ぼ、ぼくらが、……うわあ。」ガタガタ震えだして、もうものが言えませんでした。
「逃げ……。」ガタガタしながら一人の紳士は後ろの戸を押そうとしましたが、どうです、戸はもう一分も動きませんでした。
 奥の方にはまだ一枚扉があって、大きなかぎ穴が二つつき、銀色のフォークとナイフの形が切りだしてあって、
「いや、わざわざご苦労です。
 大変結構にできました。
 さあさあおなかにお入りください。」
と書いてありました。おまけにかぎ穴からはきょろきょろ二つの青い眼玉がこっちをのぞいています。
「うわあ。」ガタガタ。
「うわあ。」ガタガタ。
 二人は泣き出しました。
 すると戸の中では、こそこそこんなことを言っています。
「だめだよ。もう気がついたよ。塩をもみこまないようだよ。」
「当たり前さ。親分の書きようがまずいんだ。あそこへ、いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう、お気の毒でしたなんて、間抜けなことを書いたもんだ。」
「どっちでもいいよ。どうせぼくらには、骨も分けてくれやしないんだ。」
「それはそうだ。けれどももしここへあいつらが入って来なかったら、それはぼくらの責任だぜ。」
「呼ぼうか、呼ぼう。おい、お客さん方、早くいらっしゃい。いらっしゃい。いらっしゃい。お皿も洗ってありますし、菜っ葉ももうよく塩でもんで置きました。あとはあなたがたと、菜っ葉をうまく取り合わせて、真っ白なお皿にのせるだけです。早くいらっしゃい。」
「はい、いらっしゃい、いらっしゃい。それともサラダはお嫌いですか。そんならこれから火を起してフライにしてあげましょうか。とにかく早くいらっしゃい。」
 二人はあんまり心を痛めたために、顔がまるでくしゃくしゃの紙くずのようになり、お互いにその顔を見合せ、ぶるぶる震え、声もなく泣きました。
 中ではふっふっと笑ってまた叫んでいます。
「いらっしゃい、いらっしゃい。そんなに泣いてはせっかくのクリームが流れるじゃありませんか。はい、ただいま。じき持ってまいります。さあ、早くいらっしゃい。」
「早くいらっしゃい。親方がもうナプキンをかけて、ナイフを持って、舌なめずりして、お客さま方を待っていられます。」
 二人は泣いて泣いて泣いて泣いて泣きました。
 そのとき後ろからいきなり、
「わん、わん、ぐわあ。」という声がして、あの白くまみたいな犬が2匹、扉を突き破って部屋の中に飛び込んできました。鍵穴の眼玉はたちまちなくなり、犬どもはううとうなってしばらく部屋の中をくるくる回っていましたが、また一声
「わん。」と高く吠えて、いきなり次の扉に飛びつきました。戸はガタリと開き、犬どもは吸い込まれるように飛んで行きました。
 その扉の向こうの真っ暗やみの中で、
「にゃあお、くわあ、ごろごろ。」という声がして、それからがさがさ鳴りました。
 部屋は煙のように消え、二人は寒さにぶるぶる震えて、草の中に立っていました。
 見ると、上着や靴や財布やネクタイピンは、あっちの枝にぶらさがったり、こっちの根元に散らばったりしています。風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。
 犬がふうとうなって戻ってきました。
 そして後ろからは、
「旦那あ、旦那あ、」と叫ぶものがあります。
 二人は急に元気がついて
「おおい、おおい、ここだぞ、早く来い。」と叫びました。
 簔帽子をかぶった専門の猟師が、草をざわざわ分けてやってきました。
 そこで二人はやっと安心しました。
 そして猟師の持ってきた団子を食べ、途中で十円だけ山鳥を買って東京に帰りました。
 しかし、さっき一度紙くずのようになった二人の顔だけは、東京に帰っても、お湯に入っても、もう元のとおりに直りませんでした。

Original text